いったーん

オクオカの
暮らしにふれる

鳥獣害対策を実践しつつ地域に溶け込む養蜂家の小出さんに、田舎暮らしの秘訣を伺いました

オクオカ暮らしのインタビュー

移住したまちで、どうしたら上手く暮らしていけるのかな。どんな暮らしが待っているのかな。移住前に抱える不安。その答えは実際にこのまちで暮らしている人の中にそのヒントがあり、またそれはこのまちの新しい入り口なのではないかと思い、インタビューに伺ってみました。今回は「地域の魅力を伝える」「オクオカ暮らしに近づく」「オクオカと暮らす」の3つのテーマにそって5つの質問項目を設け、それぞれの中から1つずつ選んでもらい、お話を伺いました。そして、インタビューの最後に「このまちの入り口を増やすにはどうしたらいいと思いますか?」という共通の質問を投げかけ、お話を伺った方々の地域に対する思いを聞いています。

お話を聞いた人:小出 哲哉さん
元愛知県職員。定年まで愛知県立農業大学校、農業総合試験場及び県庁にて、鳥獣害対策や野菜の研究職として勤務。16年前、岡崎市のまちなかから夏山町へ移住した。現在は、岡崎市夏山町と雨山町、豊川市長沢町に養蜂場を作り、ハチミツ採取・販売を行っている。さらに、罠猟やジビエの解体などのイベント化にも取り組み、関係人口の創出を図るための仕組みづくりを進めている。
夏山(なつやま)町在住

小出さんとは、本プロジェクトを通じて知り合いました。元公務員という共通点もあり、私自身どこか親近感を覚え、ぜひ一度じっくりお話を伺いたいと思ったのがきっかけです。実際にお会いすると、穏やかでユーモアを交えながら語ってくださる方で、地域に溶け込みながら自然と向き合う姿勢がとても印象的でした。 今回は、移住後のリアルな暮らしや地域との関わり方、そして養蜂や鳥獣害対策を通して描くこれからの構想についてお話を伺いました。

お話を聞いた日:2026年1月14日

住みながら見つけたこの町ならではの工夫を教えてください。

小出:私はもともと田舎暮らしがしたくて、農業をやりたいとかミツバチやりたいとか、いろいろなことを思ってきました。移住して、庭先で家庭菜園を始めたのですが、植えたばかりの玉ねぎをサルに全部引っこ抜かれたり、エンドウをきれいに収穫されていたりして(笑)。移住した当時、私は仕事でも、県の鳥獣害対策の担当になったばかりで、鳥獣害対策の担当が被害に遭っていては話にならないと思い、教科書で学び、現場で試しながら身につけました。そして、人に言うだけじゃなくて、その知識を活用して自ら柵を作りました。実際に「ほら、1匹も入らないじゃん」ということを地域の人に証明することによって、自分の野菜も守れるし、鳥獣害対策の担当としての説得力にもつながりました。

また、このあたりはイノシシやシカの被害がすごくひどいんです。農家の人たちに自分の畑は自分で守りましょう、捕獲しましょうと言っていたんですけど、自分では捕獲した経験がなかったので、地域でもともと罠猟をしている方に教わりながら、自分でもやり始めました。みんな獣害に困っているので、すごくありがたがられました。あとは、チェーンソー使って薪を割ったり、畑をやったりしてたんでみんなが「まちから来た人間でも田舎暮らしできるやつだな」と、認めてもらえたんじゃないかなと思いますね。

森:最初は戸惑ったけど、今は当たり前になっていることはありますか?

小出:田舎に来たら行事には参加しないとダメだなと思って来ました。夕方神社の常夜灯社に火を灯しに行く「灯明当番」なんかもあって、夫婦で働いていると夕方には灯しにはいけなくて、夜中につけて、本当にこれでいいのかなと思ったりしながらも、当番として勤めをしたりもしました。今は灯明当番は無くなりましたけど。

森:最初は戸惑いつつも、途中から変わってきたところはありますか?

小出:神社の氏子総代の係に選出されたというか、やらされたというか、これがすごくよかったんです。夏山八幡宮という神社でそのお祭りを取り仕切るような係なんですが、それをやると、「農業大学校の先生をやっていた」「県の職員だった」といったことも含めて、みんなが私のことを知ってくれるんです。夏山八幡宮は夏山町全体の神社なので、自分の集落だけでなく、夏山町全体の人とつながりができました。

森:そういうお祭りというか行事を通しながら地域の人と関わりを持つことができたということですね。

小出:それをやってなかったら今でも誰も知らずに終わってたかもしれない。地域にいたら地域の人たちと一緒に何かやれるとか、行事に参加するというのはすごく重要でいい機会だと思うんです。夏山八幡宮には「火祭り」という大きなお祭りがあるんですけど、そういうときには集落だけじゃなくて、町全体みんなで一緒にやれるので、知り合いも本当に増えますね。そうやって知り合いが増えると、鳥獣害対策の罠をかけるために地主の許可を得るときにも、集落の人とつながりがあると、あの山の持ち主は誰?って聞いたら教えてくれるんです。夏山八幡宮の前とか裏とかあちこちに罠をかけてますけど、そういうときに知り合いがいっぱいいますので、許可を得やすくなります。

森:お互いの顔がわかって、やりたいこともできるようになると。

小出:そう。全然知らない人、信頼関係がない人だと「なんだこいつ?」ってなる。仕事でもそうでしょ?分かった人から頼まれたら、「ああ、やったるわ」ってなるじゃないですか。そういうのと一緒で、地域で活動しようと思ったら、地域の人をよく知っていないと物事は上手く進まないんですよ。

森:そのために行事に参加するというのも大事なことということですね。

小出:そうですね。そういうのは嫌がらずにやるというのが田舎暮らしの秘訣です。


この町に住んでよかったなと思うエピソードとかありますか?

小出:これはたくさんありますよね。私は子どもの頃から虫取り小僧で虫好きで、自然大好きで、名古屋出身ですけど都会が嫌いで田舎に行きたくてしょうがなかった人間なんです。

まず星がきれいでしょ。空気もきれいで、一番環境的によかったのは、ホタルが多いこと。私、小さい頃に庭にホタルが飛んでくるのが夢で、今はそれが叶って庭にホタルが飛んでくるんです。網戸にもくっついたことがあって。季節になると小学生とその家族を集めて、学校の行事としてホタル観賞会があるんです。夕方に音楽会とかをやって、夜になったらホタルを見て帰りましょうというものなんですけど、今は神社の係から変わって福祉委員として草刈りをしたりとか、色んな準備もしています。福祉委員はアユつかみ大会とか、ホタル観賞会とか、バス旅行とかを企画するんです。企画だけでなく、当日のための草刈りやテント張り、アユを放すマスを作ったりもします。

あとは、ここにいたら獣天国ですから、イノシシ、シカ、サル、キツネ、タヌキ、アナグマ、そういうのが山ほどいて罠かける時にビデオをつけておくと動物の生態写真が撮れるので、県の鳥獣害対策の仕事の講習会で動画を見せてあげるとすごくみんな注目してくれました。獣が警戒しながら入ってきて捕まった瞬間を見せると、へー、と思うじゃないですか。だから動画はめちゃくちゃ役に立ちました。

森:これまでお仕事でやってきた鳥獣害対策の知識や経験をそのまま地域にフィードバックできているんですね

小出:それ以外にいいところは、夏が涼しいってことですね。まちなかと5度ぐらい違う。去年の夏はめちゃくちゃ暑かったからエアコンを入れましたけど、それまでエアコンをほとんど入れたことがありませんでした。寝るときは窓を開けっぱなしで寝ていました。風通しがよくて涼しいんです。

あとは、「コンビニが6キロ先にしかなくて、駅まで10キロ」と聞くと、住みづらいとか生活不便だなと思うかもしれないけど、全然そんなことなくて。信号が1個しかないから6分でコンビニまで着く。渋滞もないからね。岡崎東インターができたことによって便利になりました。県職員の時は長久手の職場にも通っていたのですが、岡崎東インターまで信号6つ、長久手インターで下りると職場まで信号1つ。そうすると、信号7つで行けちゃう。だからめちゃくちゃ通いやすいんです。

森:それはすごい利点ですね。

小出:電車で県庁に通っていた時も本宿駅のすぐそばに安い駐車場があるので、そこから電車に乗っていったらすぐでした。本宿駅は急行も止まるし、すごく便利なんです。まち中の喧騒の中で暮らすよりも、ここで悠々自適に過ごせる。私はそのほうが住みやすいですね。


このまちで今後実現したいことを教えてください。

小出:花いっぱい運動みたいなのをやりたいなと思っていて。

森:それはなぜですか?

小出:ハチミツの蜜源にもなるし、耕作放棄地に花を植えたらきれいじゃないですか。散歩する人も、「花きれいだな」ってなるし、まちの人が来てきれいだなって思ってもらえる。だからミツバチのためにも人のためにも、花いっぱい運動みたいなものをやりたいと思っています。

ハチミツ絞り体験のイベントを行っているのですが、今度は日本ミツバチの巣箱づくりのイベントを計画しています。私が飼っているのは西洋ミツバチで、あれはプロじゃないと飼育はほとんど無理なんですが、日本ミツバチは日本全国にいる自然のハチなので、自分で捕まえたらタダで、すごく安くできる。手入れもほとんど不要なんです。

自分で楽しむぐらいのハチミツは十分取れるし、日本ミツバチが増えていくのもいいなと思っています。巣箱を作るイベントをやってみんなでミツバチ飼いましょうというのも計画しています。


どうしたらこの町の入口が増えると思いますか?

鳥獣害対策で言うと、どんどん地域で獣を獲る人がいなくなってきていて。鳥獣害対策をまちの人を呼んできてやりたいと思っています。地域の人たちではやりきれないから人の手を借りたほうがいいんじゃないかと思って、今考えているのは、罠オーナー制です。罠をかけるには狩猟免許と捕獲許可が必要なので設置は私が行い、オーナーに罠をかける場所を1万円で選んでもらってそこに罠をかける。それをビデオで映して情報を送って、「今こんなふうに獣が来ています。来られる時間はありますか?」とやりとりをして、OKならその日に私が捕獲して、オーナーさんが自分で解体して、肉を持って帰ってもらうと。そうすると、オーナーがちょっとずつ地域に関わり、いわゆる関係人口みたいなものになる。

あと、最終的には罠シェアというのもやりたいです。例えばこの裏山全部とか夏山町全部とか広いエリアで罠かけていいよという場所を集めて、まちの人たちに登録してもらって登録した人たちが自分たちで獲って、自分たちで持って帰っても大丈夫、という仕組みです。

森:なるほど。夏山町の中で罠を仕掛けていいよという仕組みを作っていきたいということですね。

小出:そう。そうすると、獣が好きな人、自然が好きな人がどんどん来るようになるじゃないですか。罠ってかけたら毎日見なくちゃいけなくて、そうすると毎日来るようになる。イベントだったら1日しか来ないけど、罠だったら毎日来るようになる。で、毎日来るのはめんどくさいでしょ?そしたらここに住んだほうがいいじゃん、となる。こんなに獣がいて、こんなにいいところがあるんだったら住もう、と思う人がきっといると思うんです。そうすると人口減少対策にもなる。それもただ単に田舎暮らしがしたいとかそんな動機じゃなくて、本当に自然が好きな人、山が好きな人、獣が好きな人、そういう人たちが来てくれるので、「もうやめた」ってすぐには帰らないよね。勝手な想像だけど。この夏山の自然をそうやって楽しんでもらうと。ここで定住して、長く住んでもらうには楽しくないといけないので、私もそれなりには楽しんでいるほうだとは思うんだけど。

森:そういう楽しみを皆さんに知ってもらうようなきっかけづくりをしていきたいということですね。

小出:そうですね。農業大学校の野菜の先生を長いことやっていたので、農業指導とかもやれないことはないんだけど、どちらかというと得意分野は虫と獣なので、あまりそっちのほうまでやると手が回らなくなるので、それは追々やれたらいいかなと思ってます。

森:やりたいこと、やれることがたくさんありますね。実現されていくのを楽しみにしています。



インタビュアー

森 隆行

森とまちをつなぐ活動に取り組む。地域と自然の関わりを探求中。