いったーん

オクオカの
暮らしにふれる

下山生まれ、下山育ち。3人の子どもたちをここで育ててきた浩美さんに、このまちの魅力と暮らしについて伺います。

オクオカ暮らしのインタビュー

移住したまちで、どうしたら上手く暮らしていけるのかな。どんな暮らしが待っているのかな。移住前に抱える不安。その答えは実際にこのまちで暮らしている人の中にそのヒントがあり、またそれはこのまちの新しい入り口なのではないかと思い、インタビューに伺ってみました。今回は「地域の魅力を伝える」「オクオカ暮らしに近づく」「オクオカと暮らす」の3つのテーマにそって5つの質問項目を設け、それぞれの中から1つずつ選んでもらい、お話を伺いました。そして、インタビューの最後に「このまちの入り口を増やすにはどうしたらいいと思いますか?」という共通の質問を投げかけ、お話を伺った方々の地域に対する思いを聞いています。

お話を聞いた人:成瀬 浩美さん
生まれも育ちも下山。旦那さんも下山生まれで生粋の地元住民。3人の子どもたちを育てあげ、現在は畑や田んぼ、地域活動に全力投球!
中伊町在住

下山生まれ、下山育ちの浩美さん。普段は会社のパート社員として働く傍ら、週末やお休みの日には農家として、ご家族とともにお米や野菜を育てています。また、最近では地区内の農用地保全を目的に実施している体験農園プロジェクト(となりの田んぼ)を運営したり、下山の農家さんがつくる野菜を毎週日曜日に「YAMABIKO青空市」として販売するなど、地域活動にも積極的に関わり、地域にとっても欠かせない存在の一人です。陽気でいつも明るいお人柄から、地域でもたくさんの方に慕われており、自分も下山に行くたびに、自家製のお野菜や郷土料理等をいただくなど、下山のことや暮らしのことをたくさん教えていただきました。 インタビューでは、そんな浩美さんが感じるまちの魅力や美味しいもの、そして今後このまちで実現したいことなどについてお話しいただいています。まだまだやりたいことが盛りだくさんの浩美さんのお話から下山の暮らしの様子を感じていただけると嬉しいです。

お話を聞いた日:2023年11月30日

このまちの魅力を教えてください。

成瀬:山桜を愛でる会はおススメですね。20年以上前に高木田さん達がはじめられた。ちょうどその頃私は2人目か3人目を出産した直後くらいでした。なので自分は行けなかったんですが、実家の親が子供を連れていってくれたという思い出がありますね。

岩ヶ谷:山桜を愛でる会には今も参加されていますか?

成瀬:今は踊ってる。山桜を愛でる会や夏の盆踊りでは、よさこいチームで踊らせてもらってます。お手伝いスタッフじゃなくて参加者のほうですね。踊り子として参加してる。

岩ヶ谷:山桜を愛でる会、まだ参加できてないんですよね。今年こそは参加したい。

成瀬:料理もありますしね。会の人たちが中心になって天ぷらを揚げてくれます。山菜、たけのこ、ワラビ、土筆、しいたけ。そういう下山でとれる山菜が中心ですね。あとは抹茶を立ててくれる野立てもあります。

岩ヶ谷:それを聞くだけでお腹減ってきますね。浩美さんも浩美のお子さんたちにとっても山桜を愛でる会は思い出の場所なんですね。

成瀬:そうですね。よさこいを始めて子どもたちと4人で私はずっと踊ってきたからね。山桜を愛でる会はチームができて最初の大きなお祭りなんです!

岩ヶ谷:このまちの魅力について、それ以外はありますか?

成瀬:過疎化してはいるけれど、人は温かいね。私は実家も嫁ぎ先もこっちだから、うちの子どもたちも「浩美ちゃんの子どもだ」ってみんなに愛してもらっている。有名ってわけじゃないけどすぐ分かるじゃん。みんなに関わってもらえて、そういう温かみはあるかな。

岩ヶ谷:まちなかで子育てしててもそうはなりにくいですよね。

成瀬:子どもの高校の友達が市役所のそばに住んでるんだけど、隣に住んでる人とかの情報は全然知らないって言ってた。だからうちの娘が下山のイベントに友達を呼ぶと、「今度どこの保育園に行くんでしょ」ってみんなに情報が漏れ漏れでびっくりすることが多いみたい。笑

岩ヶ谷:それは僕らからするとこのまちの魅力だと思いますね。

成瀬:だけどこれは、ずっとここに住んでるからできることでもあるよね。子どもが小学校に入ったとき、お嫁に来ているお母さんと考え方の違いでバトルしたこともあった。私たちはずっとこうやってきたから、当たり前っていうか。だけど、その人たちからすれば違うじゃん。でも私としてはここにお嫁に来たなら「自分がこう思う」じゃなくて「ここではこうやっているから、とりあえずはみんなと同じことをやってみようよ!」という思いはあったね。


このあたりの美味しいものを教えてください。

成瀬:こんにゃくと、今日ちょうど会社に持っていったんだけど、鹿肉のロースト。

岩ヶ谷:美味しそうですね。

成瀬:旦那さんが鉄砲を撃つようになってから、鹿か猪の肉がわが家にやってくるようになったんです。最初、鹿はから揚げにしたりしていてそれはそれで美味しいんだけどちょっと固いなって思っていたんですよね。旦那さんの狩猟仲間が低温調理器でローストビーフみたいにローストして食べるのがおいしいよって教えてもらって、やってみたら美味しかった。

岩ヶ谷:旦那さんは額田猟友会に入られているのですか?

成瀬:そう、今で4年ぐらいかな。鉄砲は害獣駆除の仕事の関係から始まったかな。

岩ヶ谷:行政の方たちで免許持っている方いらっしゃいますもんね。

成瀬:でも鉄砲は少ないと思うよ。罠と檻だったら役所の中でも持っている人は割と多いと思う。

岩ヶ谷:鹿肉のローストは季節的にはいつがいいんでしょうか?

成瀬:そもそも山での狩猟は12月15日から3月15日までの期間しかやってはいけないことになってる。害獣駆除として殺したりするのはいいんだけど、それ以外の期間では捕まえて食べちゃダメ。畑とか田んぼとかを荒らすから捕まえるのはいいけど、食べるのはダメみたい。

岩ヶ谷:へえ。そうなんですね。血抜きとかはどうされているんですか?

成瀬:それは猟友会の方たちがやってくれる。狩猟をやる前にも近隣の人にもらったりはしてたんですよ。たまに血抜きされていない肉をもらうことがあったけど、切っているうちから臭くて、焼いても、食べても臭くて、やっぱり上手な血抜きは大事だなと。

岩ヶ谷:なるほど。さっき話にあがってましたが、こんにゃくも自分で作ってるんですか?

成瀬:そうそう、今はみんな作ってるね。芋を茹でてミキサーにかけて、こんにゃくを練る。こんにゃくの素は炭酸ソーダっていうんだけど、そのソーダを入れたらこんにゃくの匂いのするものができて、握って、もういっぺん茹でて、水の中に漬けておくと灰汁抜きができて食べれる。刺身こんにゃくとかでね。

岩ヶ谷:去年いただきましたね!すごく美味しかったですね。

成瀬:自分で作るから、そんな固いこんにゃくを作る必要はないじゃんね。やわらかくてぷるぷるのやつが好き。YAMABIKO青空市(下山で実施している市場)で売れたらいいんだけど。

岩ヶ谷:保健所の許可が必要になりそうですね。

成瀬:行政の方々と許可関係を少しずつ取っていて、お菓子とお惣菜と飲食ができるようにはなっているんだけど、こんにゃくはまだ難しいんだって。


このまちで今後実現したいことを教えてください。

成瀬:実は私、下山に昔あった雑貨屋の孫なんだよね。孝の司(柴田酒造場)の隣に雑貨屋があったんです。バー「おいね」という名前のついたお店でした。

岩ヶ谷:話は聞いたことがあってお酒を飲むところという認識でしたが、雑貨屋だったんですか?

成瀬:そうなんだよね。正式には「卯月屋(うづきや)」って名前はあって、でもうちのおばあさんがイネさんっていう名前だから、おいねさんという名前のお店になったの。その店が夜飲める場所になってて、バー「おいね」になっていった感じ。雑貨屋というか、駄菓子も売ってたから、小さい頃から人の集まる場所をずっと見てきたじゃんね。昼中はおばあさん達がコタツを囲んで井戸端会議しとって、夜になると孝の司の流れのおじさま達がみんなでワイワイと酒を飲む場所がバー「おいね」だった。2、3年前にその建物を壊しちゃったけどね。

岩ヶ谷:いまは更地になっているところですよね?

成瀬:そうそう。だからそういう人が集まる場所というか、なんかいいなと思っているけど、難しいんだよね。そんな感じで、そういう井戸端会議ができる場所ができたらいいなって思ってる。

岩ヶ谷:いつかYAMABIKOでそういうことができたらいいですよね。

成瀬:そうそう、ここは飲食できるからさ。いまは日曜日は青空市だけだけど、もうちょっと地元のみんながまったりできる場所になったらいいなとは思ってる。でも難しいんだよね。今は寒くて、青空市でも人あまり来ないし。

岩ヶ谷:バー「おいね」があったときは酒蔵で働いてる人が多かったし、そもそも人が今より多かったのかな?

成瀬:まあね。帰りに寄っていく、仕事の帰りに一杯引っかけて帰るとかさ。

岩ヶ谷:いいですね、バー、カフェ「おいね」ぜひ!やりましょうよ。


どうしたら、このまちの入口が増えると思いますか?

成瀬:入口、難しいよね。子どもたちはどうしても出ていくからね。うちもまた1人、家から子どもがいなくなるしね。

岩ヶ谷:いやいや今回は喜ばしいことじゃないですか。

成瀬:喜ばしいことだけど、娘の彼は山から出たくない人だから、子どもを育てる環境もまちなかの環境じゃなくてここで育てたいっていう、そういう特殊な子だから。だから、近くにはいるけど。地元で育った子どもたちが地元で育つ、暮らせる、そんな環境が本当はいいなと思うんだけど、それを全否定して自分の息子は出ていったからさ。笑 そうやって育てたんだな!って思いながらね。

岩ヶ谷:息子さんはむしろここじゃないところで住みたいっていう願望が強かったんですか?

成瀬:そうね、多分帰ってこないかな。旦那に帰ってこいと言われているけど。大学4年間長野に行って、とりあえず帰ってきて、4年ぐらいは名古屋まで通っていたけど、やっぱり不便なんだよね。彼は山は大好き。とくに雪山が!

岩ヶ谷:そうなんですね。でも娘さんは下山が好きで、すごく自然派のような印象をもちましたが。

成瀬:長女のほうかな?もう1人の保育士やっとった子のほうが自然好きかなと思う。

岩ヶ谷:あれ?お子さん3人いるんでしたっけ?

成瀬:いる。真ん中が一番地元にも馴染んで、協力的にいろんなことをやってたけど嫁に行っちゃった。ここにおらにゃ話にならんじゃん。大学の頃から地元のお手伝いをして、クリーン運動にも出て、いろんなことに参加してたから。

岩ヶ谷:なるほど。ここで育った子どもたちがこのまちで暮らせるような環境になると、自然にこの入り口がまた広がっていきそうですね。

成瀬:そうですね。今は小学校、中学校の子どもさんを持つお母さん、お父さんが戻ってきてるからさ、そういうことも続いていくといいな。



インタビュアー

岩ヶ谷 充

8年前に岡崎市に移住。川とともにある暮らしの実現を目指し、地域の人々と活動を行う。犬が好き。